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活字中毒者のための一服読み物です。銜え煙草で暇つぶしに読んでください。


by upperbrain
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夢のあとさき

子供の頃からずっと持ち続けてきた夢が、死ぬまでに一冊は、自分の書いた物語を本にしたい、という事でした。
どこの出版社でもいい、自費出版でもかまわない。
そう思い続け、ずっと「自分が読んで一番面白いと思える小説」を書けるように、
あるいはノートに、あるいはルーズリーフに、あるいは原稿用紙に、果てはネット上に、
駄文を書き連ねてきました。
今もその夢はなくなったわけじゃありません。
しかし結婚し、子供が出来たここへきて、今の自分の夢が変わってきている事に気づきました。これまでの夢に挫折したとか、疑問を感じ始めたとかでなく、これまでの夢を一度諦めてもいいかなと思える程の思いに至ったのです。
嫁を幸せにしたいんです。
綺麗事だろうし、狙って美文をきどってると思われるでしょうが、今心からそう思っています。
自分は至らない男ですし、甲斐性もないし、口では幸せにしたいなんていいながら、
実は何も出来ていなかった男です。
小さな頃から抱き続けてきた夢を諦めるというのは、それこそ中途半端だし、逃げることだと思われても仕方ないと思います。
しかし、物語を読むのも、書くのも、一生やめることは出来ないと思うけど、
家族をないがしろにするほどの集中力で物語に没頭することは、罪悪感を抱きますし、
どこかでつまらない日常から小説の中に逃げているんじゃないかと、
居心地の悪さを覚えるときもあります。
嫁も馬鹿な奴ですし、短気です。
けども俺にとっては俺を選んでくれた人だし、愛らしいところも一杯あります。
嫁と結婚して、幸せにしたいと思ったものの、嫁の一生涯の夢であるウェディングドレスをまだ着せてあげられてはいません。
俺の知り合いには夢に向かってひた走る男達も少なくなく、彼らに引けを取らぬようあがいて生きることが格好良いと、思ってきました。
しかし夢を見ることで、俺の側で暗い顔をしてうつむく家族を見たくはありませんし、
俺は家族が大好きです。
一言で、幸せにすると言っても、その形は全く見えませんし、それこそ一生を掛けなければなし得ないことかもしれませんが、しかしそれが今の俺の夢です。
正直な話、俺が小説を書くことをやめたからといって嫁が幸せになるかと言うと、そんなこともないと分かっています。
これは自分にのって、これまで胸を一杯にしてくれてた夢にたいするけじめだと思っています。結婚して、子供ができて、時間のなさを理由に書くことを疎かにしつつも、心の中では、俺には夢があるから大丈夫、なんておかしなことを考えていました。夢があるなら、動かなければいけない。しかし実際は動いていませんでした。
そんな自分が嫌で嫌で仕方ないし、そんな浮ついた気持ちで、夢も、家族も、思うように行くはずはありません。
今俺は、嫁を、家族を幸せにしたいです。
もしも俺が独身だったなら、俺はこれまでの夢を諦めようなんて微塵にも思わなかったことでしょう。
本当は結婚しているとかいないとか、関係のないことかもしれません。
しかし俺にとっては、一人で生きているわけじゃない以上、今抱き始めたばかりの夢を上回る思いを抱くことはできないと思います。
一流の作家のように、断筆宣言をきどるわけじゃないですけど、
ひとまず物書きになりたいという夢には眠ってもらうことにします。
これからは新たな夢に向かって、走っていこうと、思います。
# by upperbrain | 2004-10-22 23:34 | ノスタルジー